このカヤも、いよいよ見納め。
お別れの日。
朝8時。
ポツポツと降る雨の中、伐採作業が始まりました。
今日もカヤの涙雨かな。
「カヤの最期に立ち会いたい」
と入れ替わり立ち替わり訪ねてくれる皆さんと一緒に。
斜面の下に倉庫があるので
落ちる可能性がある枝は残してありましたが、
今日はクレーンで吊りながらの作業。
どんどん進みます。
まずロープで木の上部をしっかり固定して、
伐る位置まで降りてきて
チェーンソーで伐る、という作業の繰り返し。
伐採担当の小幡さんは、ずっと空中での作業です。
いよいよ、一番てっぺんの梢を下ろします。
根はまだ生きているけれど、
木としての命が終わる瞬間に思えて
思わず手を合わせました。
これがてっぺんの梢。
今日の最後に切り株に立てる
「鳥総(とぶさ)」です。
よく見ると、梢の中に鳥の巣が…!
思わずラピュタを思い出した私。(←ジブリ好き)
ヒタキじゃなくて、カラスかな?
こんなに大きな木のてっぺんで、
さぞ気持ちよかっただろうな〜
地上に降りたらこんなに大きい!
上から順に、重すぎないように伐り縮めていきます。
折れた大枝の残り部分を吊り下げた時の、
クレーンからのアナウンスの声。
「1600」
これは、後できいたら
「重さが⒈6トン」という意味。
予想よりもかなり重かったそうです。
「傷んだ大枝が⒈6トンなら…」
同じ太さの健康な大枝をどこで伐るか?
材木としては、なるべく長く伐りたい。
でも、安全に作業できる重量と、
トラックで運べる長さの限界がある。
伐採の小幡さんとクレーンの鈴木さんが
慎重に相談して決めていきます。
いよいよ、根元の一番太い幹です。
一体何トンあるんだろう?
ロープを結ぶだけでも、
ぐるりと一周しては直して確かめて、
とても慎重に進めていきます。
チェーンソーの歯が入った時には、
さすがに泣けました…。
でも。
ここからがカヤの第二の人生の始まり。
この部分は「一番玉」と言って、
市場価値が最も高い部分。
傷みがなるべく少ないといいのですが…
地面に降りた幹に、駆け寄るギャラリー
予想したよりも、ずっとよかった!
「芯まで傷んでいる可能性がある」
と言われていましたが、
かろうじて芯も残っていました。
十分価値あるカヤ材として活躍してくれそうです。
ああ、よかった!
そして、幾重にも重なる年輪の迫力に、一同ため息。
「すごいよね〜」
「よくここまで生きたね」
皆さんに促されて、家族写真も
断面も綺麗に仕上げてくれました
木として長年生きたこの地を離れて、
カヤはいよいよ旅立ちです。
私も感無量。
植えて育ててくれた先祖たちへの感謝と敬意、
誇らしい気持ちでいっぱい。
そして何より今日まで生きたカヤにも。
長生きで、本当にすごかったね。
今まで本当にありがとう!
そして、いってらっしゃい!
伐った長さは約3メートル半。
重さは5トン以上!
トラックでは運べない重さだったので、
2つに切って運ぶことになりました。
3トントラックが重そう…気をつけて!
カヤは市場ではなく、伊那市の製材所へ運ばれていきます。
これはまた、別の話でゆっくりと。
迷子になりながら、数人がかりでかぞえました
万葉の時代から続く鳥総立て
鳥総立てと年輪数えには、
教育委員会の方々と、公民館長さんも駆けつけれくれました。
数人がかりでがんばって数えた年輪は…
およそ300年!
直径⒈5メートルにしては若いカヤでした。
「推定400年のカヤ」改め、実年齢300年のカヤ。
日当たりのいいこの丘で300年、
きっと伸び伸びと育ったのでしょう。
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年末に大枝が折れて以来、
あっという間に過ぎたこの2ヶ月半。
「カヤのためにできることをしたい!」
単なる「支障木の伐採」にだけはしたくなかった。
その一心でした。
結果的には、こんなにも沢山の方々が想いを寄せてくれたこと。
本当に嬉しく感謝しています。
そして作業を安全第一に、
気持ちのよい仕事してくれたチーム山久農林の皆さんにも。
ただただ、感謝です。
ありがとうございました。
そして2日間、お疲れさまでした!
これからカヤ材がどんな風に生まれ変わるのか。
この場所も、明るく見晴らしのいい丘に生まれ変わりました。
天竜川からの風がとても心地いいです。
少しの切なさと、
心からの清々しさに浸りつつ。
今日はこの辺で。